富士山
富士山をつぶしなさい。
岡本太郎さんは、「八の字」文化からの脱出を強調しています。
どういう論旨か要約してみると次のとおりです。
「料理屋とか古風な家などに行くと、ついたて、ふすま、のれんなど、ちょっとした工芸品のすみにまで、八の字のような形の絵が描かれています。
八の字とは富士山だ。
そして、その富士山は自然の富士山のかけらさえも感じさせることがない。
山の実感など、どこにもとらえられていないにもかかわらず、誰もがおかしくも思わず文句が出ないのはなぜだろうか。
それは、絵というより一種の符丁、合い言葉だからだ。
八の字=富士山―結構なものというように、無意識のうちに約束事のようにしているからだ。
その他"鯉の滝のぼり"にしろ、松だの虎だの達磨だの、われわれがしょっちゅう床の間でお目にかかっている画材もこの八の字に毛がはえた程度のものです。
われわれは、こういった感覚から脱却しなければ、精神的な堕落を続け、新しいものを生み出すことができない」
この点については、まさにそのとおりだと思います。
子供に絵を描かせると、赤いクレヨンで丸い円を描いてぬりつぶし、周囲にチョンチョンとひげをつけて太陽にします。
その下に家を描き、ロボットのような人間の絵を描き、チューリップかひまわりなどの草花の絵を添える。
これでは実感のこもった絵とはいえない。
ごまかしのきく符丁といわれてもやむを得ないでしょう。