フィクション小説(´ω`)
あのカフェで会った日は、その二度目の挑戦のデスクトップ仮想化の試験がちょうど終わって、後は結果を待つばかりという、実はとても微妙な時期だったのです。
「どうだった?」と聞いたら首をかしげて「わからない。駄目かもしれない」と、確かに彼女はあまり自信があるようには見えなかった。
が、それまで周りで「バカロレアに落ちた」という話を具体的には一度も聞いたことのなかった私は、バカロレアというものはとにかく受かるもの、という感覚しかなかったから、実際に「落ちる人がいる」という発想をまるで持つことができなかったのです。
そういうわけで、自信のない彼女に今にして思えばちょっと無神経だったと後悔されるがさらに続けて追い討ちをかけるように「で、バカロレアを取った後はどうしたいの?」と聞いたのです。
「大学に行きたいと思っているけど・・・」
「どんなことが勉強したいの?」
「よくわからないけれど、経済とかビジネスとか・・・」
それまであんなに大人っぼくはきはきとしていた彼女の口調が、急にもぞもぞと心許ないものに変わったことに気づいたから、その話題をそれ以上追及せずにいたら、何となく他のことに話が移って、そしていつの間にか再び、彼女は大人びた落ち着きを取り戻していました。
「バカロレアだけが人生じゃないし何とかなるわよ、きっと」
しょげ返った母親を慰めるつもりでそういったが、彼女は案外けろりとして
「そうね何とかなるわよ、私もそう思う」
といったきり、もうそのことには触れないのでした。